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シャンタラム下巻 グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ@伏線もどんでん返しもあった驚きの自伝的小説

2012-04-02 | 23:41

この小説の魅力は、輝くような文章とカレイドスコープからあふれ出たような多彩なエピソードだと思っていました。
そしてそれだけで充分以上に素晴らしい。

惜しむらくは全体の構成で、自伝的小説なるが故に、前もって作者が周到に計算し準備した筋書の巧みさを堪能することは出来ない相談なんだろうな、と諦めていたのも確かなんです。
ところが下巻に至り、実はこの小説には伏線も大どんでん返しもあったということに驚かされる。
ビックリするようなエピソードは、完全フィクションであっても反則ギリギリのラインもあるんだけど、これだけグルーブし、絢爛たる文章で読ませてもらえるんならイイやって思わされますね。

確かにこの下巻にもなると、上、中巻にあった床も踏み抜けとばかりに全開だったアクセルも少し戻されます。
ストーリーのテンポ、というか読者を乗せて走る勢いは少し落ちる。
インドからアフガニスタンにまで舞台が移ると、読者は話の風呂敷を大きく広く感じ過ぎてしまい、ちょっとついて行き難い領域に入ってしまうのだ。
しかし「運命にはいつもふたつの選択肢があるー選ぶべき運命と、実際に選ぶことになる運命のふたつだ」とか
「振り下ろされ鞭のように、沈黙は確実に人を傷つけることができるーしかし、ときとして沈黙こそが真実を語る唯一の手段であることがある」
なんて文章に痺れて読みすすむと、いよいよこのウルトラ長編小説もお終い。

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Theme : 読書メモ
Genre : 学問・文化・芸術

シャンタラム中巻 G・D・ロバーツ@アクセルは以前、床から離れない

2012-03-21 | 23:25

この小説は上下巻でなく、上中下巻。
総ページ数1800で、この中巻までで1300p超。
大したモノなのは未だ読者を乗せたクルマのアクセルが床から離れないこと。
「アンダー・ザ・ドーム」では、「アクセル踏みっぱなしの小説を書く」と宣言して成功させたS・キング。
アメリカでも評判になったこの小説をどう読んだのだろう、なんてことが気になる出来です。
その馬力に切歯扼腕した?
ただ感心した?

味わいはクルマにたとえるならキングはアメリカン・マッスルカ―で、ところどころにヨーロッパ的な教養が滲むコチラは欧州車ですね。

造り方も異なる。
完全なるフィクション・ライターたるキングの作法は、中心に大きな題材をおいて、幾多の人が平衡して話を進める方法。
コチラは自伝的小説と謳うだけあって、あくまで主人公の目線で話は進み、実際の人生と同じく、中心となる軸はなかなか見えてこない。
多彩な輝きを放つエピソードから、やっと本筋らしきものが立ち上がるのは中巻も半ばからだ。

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Theme : 本の紹介
Genre : 学問・文化・芸術

シャンタラム上 グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ@これは太陽を砕き、その破片で描かれた小説

2012-03-09 | 21:03

出版社も商売なんで、本が売れないのは困る。
特に昨今の不況は厳しく、活字離れも甚だしいとか。
だから宣伝文句には始終、傑作、という文字が踊ることになる。
言う間でもなく、いちいち本気にしてはならない。
でも稀に、本当に凄い、とてつもない作品が出てくる。
それも幾多の凡庸な作品と同じく「これぞ傑作」と呼ばれるのだが、真の姿はまるで違っている。
これは太陽を砕いた破片で、白熱した目も眩むような光で描かれた一編だ。

話は、脱走したオーストラリア人の武装強盗犯が、ボンペイのスラムに潜む処から始まる。
どっかで聞いたような凡庸な設定だって?
おっしゃる通りだ。
オーストラリア人の武装強盗犯に興味はないって?
私もなかった。
インドのスラムも興味の対象外?
私も同じく。
それでもなおかつこの小説をひとたび読みだせば、貴方は圧倒的なドライブに誘い出される。
文章は燃えたぎり、ストーリーの飛んでいく先は、まったく予断を許さない。
次々に惜しげもなく繰り出されるエピソードは、シェヘラザードもかくや、という多彩さだ。

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Theme : 書評
Genre : 小説・文学

百年の孤独 ガルシア=マルケス@本当の楽しみは簡単ではないのかも

2009-08-23 | 15:04

G・マルケス「百年の孤独」、読了しました。
実はこの本、一度挫折していたので、今はちょっとした山を登りきった気分です。
以下、感じたことを書いていきます。

1)南米文学のマジック・リアリズムを堪能できます
草原に突如出現する帆船、海竜の腹中から出る十字軍戦士の甲冑。罠に掛かる正体不明の怪物、巨大な屋敷を放浪する死者の群れ、三千人を超える死者を乗せた200両を超える貨車、幾度も復活する賢人の霊・・・南米の激しい風土が生み出す幻覚と覚醒が交じり合うエピソードは絢爛たるシーン生み続け読みどころ満載です。


2)性と生は不可分なんだな
巨大な男性器が旺盛な性欲の暗喩となっています。
巨根の男性は常に女性の憧れとなり幾多の交わりを持ちます。
処女はその上で小鳥のように八つ裂きにされ、息耐えそうになることを堪えますが、この世に生を受けたことを神に謝し耐え難い苦痛の中で想像を絶する愉悦に朦朧となりながら破瓜されます。
性は生と不可分であるが明らかにされ、性の味をしめた女性の貪婪な下半身は飽くとのない野心の塊りとなります。

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Theme : 読書ノウト
Genre : 本・雑誌

トミーノッカーズ下巻 S・キング@巧い凄いオモシロイ!あらゆる恐怖を取り揃え

2009-08-15 | 00:09

トミーノッカーズは下巻に入ると俄然、恐怖との戦いが始まります。
色々な登場人物が恐怖との対決を胸に秘めて立ち上がりますが、その運命に手に汗握らされるのです。

別な意味で怖い人も出てきます。
恐怖の対象に一つにせず、こういう隠し味を付けるのも名人芸の手管ですがバッチリ決まってますね。
それでその人の行く末も怖い。
でも嫌な人なのでそれが楽しみだったりもする・・・(笑

手品少年の話も怖い。
この永劫感への恐れは短編「ジョウント」に似た感じがしたのですがどうでしょう?
さらにあの中に入るのですが、入った後も怖い。(この辺のナニカが追ってくる幻想の件は、シャイニングの廊下のシーンに似てる気がしました)
怖い対象を見せた後でも怖いっては実は一流の証拠なんです。

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Theme : ホラー
Genre : 小説・文学

フーコーの振り子 ウンベルト・エーコ @桁外れの知性が語る隠秘学

2009-06-20 | 21:31

上巻だけですけど読了しました。
エーコですから大変でしたが、個人的には「薔薇の名前」より格段に読み易かったです。
その理由は今回のテーマが古代宗教や隠秘学に関することで、私の好きな分野なんですね。冒頭から私好みで、
「私は知っていた。その魔力のような穏やかな吐息のなかで・・・その周期は糸の長さの平方根と円周率との関係で規定され、πの数値は人間の知力では解き明かせない無理数であるにもかかわらず、いかなる円であっても、その完璧な比率によって必ず円周と一に結ばれる。振り子の理論的な振幅が対をなすこと、三面からなるπの実体、ルートに秘められた正方形の正体、円の絶対性、という神秘的な秘策によって定められる・・・無限に対して何の震えも感じないほど怠惰で、エンソフとの遭遇という驚異の体験を記憶にとどめることもなく・・・」
なんてんで、これはイケルという感じ。

上記の文章に、これはイケナイと思う人には辛いかな。

ともかく読んでいる間中、無尽蔵ともいえる衒学が後から後から出てくる出てくる。だから意外にも読んでて楽しいんだよね。
例えば、テンプル騎士団、カタリ派、アルゴー船のゴールデン・フリース、「光輝の書」ゾハール、

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Theme : 宗教・信仰
Genre : 学問・文化・芸術

さよなら、愛しい人 R・チャンドラー/村上春樹訳@題名に失望せず、読むべし

2009-06-15 | 20:53

最初にこの本を見たときは、「Farewell,My Lovely」って、コレ、あの「さらば愛しき女よ」の新刊ですか?
チャンドラーは村上が訳してるのに、こんなダサイ題名で単行本って、どこのギャンブラーが刊行したんだよ、と思ったら村上さんの新訳でした。

でも何故に変えたのかあの傑作題名を?
「さらば愛しき女よ」って邦題史上に燦然と輝く逸品だと思うのだけれど。
普通だったら、「買わないよ」、と思う処ですが、村上さんの訳で初めてフィッツジェラルドもカポーティもチャンドラーですら魅力が分ったしね。
これは騙されたと思って買うしかないでしょう・・・

でも読み始めから調子が出ない。
やっぱりこの題名オカシイよ、というこだわりが抜けない。
ツマラナイなあ、人生で読める本って限られてるから、ツマラナイ作品はパスした方がイイかなあ・・・まあ流石の春樹村上でも10割バッターになるのは無理だよね、これは失敗作、なんて思いながらも150P・・・この小説は突然輝き出します。

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Theme : 海外小説・翻訳本
Genre : 小説・文学

血と暴力の国  コーマック・マッカーシー@それほどのモンですかね・・・

2009-05-08 | 20:07

この作品は、アカデミー賞主要4部門他、各国で幾多の賞を獲った映画「ノーカントリー」の原作であり、著者のコーマック・マッカーシーは「ザ・ロード」でピューリツァ賞を受賞したことを始め、現代で最も重要な作家ということです。

でも個人的にはあんまりピンと来ませんでした。
独特の文体は個性的ですが、読んでいてもなんだかスカスカと通り抜けてしまう感じ。
サイコ・クライムノベルなら、呪術的な幻惑に落ちて行くようなエルロイや、ふいっと隣りに座った隣人の冷たい狂気を感じさせるトンプスンの方がずっと深いと思うのですが・・・
骨格は「シンプル・プラン」に似てますよね。
でもアッチの作品のコンビニ店の店長の方がずっと怖かったな。

レクターに匹敵する悪の造形とされた「シュガー」も浅い浅い。
レクターが評価されたのは、殺人鬼という属性を通して、類稀な美意識の存在を示唆できたからで、シュガーはスーパーな能力の持ち主であることは分っても、単なる狂人にしか見えない。
この程度の存在ならトンプスン、沢山書いてませんでしたっけ?

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Theme : 海外小説・翻訳本
Genre : 小説・文学

悲しみよ こんにちは F・サガン@なんとまあ・・・美しい倦怠と空虚・・・であることよ

2009-05-01 | 22:17

わずか17才の少女が書いた1編の小説が世界を席巻したことがあったらしいです。
少女の名はフランソワーズ・サガン。小説の題名は「悲しみよ こんにちは」
舞台は地中海を望む南フランスの別荘地、
そこで繰り広げられるまばゆいほどの日々・・・父親と娘と二人の愛人のストーリー・・・
その少女の気持が揺らいだ時に起される残酷な罠と悲劇の結末・・・

登場人物がセシルとかシリルとか言うので、男の方はついて行き難い?とも思われるかもしれませんが、内容は大したデキです。
小説の最初と最後の繋がりなんて、すでに手練の完成度。

印象派の画家のような軽いタッチで描かれる海と風と光の描写は、どことなくカミュやサルトルにも通じてます。
やっぱりフランス繋がりってあるんでしょうか?
文化的、民族的な基盤を感じます。

やっぱり人間、夏休みは5日まで、なんて言っていたらダメだね(←私の場合)

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Theme : 本の紹介
Genre : 学問・文化・芸術

賛美歌百番 B・オールディス@20世紀のSF3  幻視された美しい廃墟群

2009-01-31 | 22:21

真に創造的な芸術様式は、人類の知覚に新たなフロンテイアを切り開きます。
逆に言うと人が今まで見たことのない地平を切り開けない様式など大したことない、と言えないこともない。

この本は科学というまったく新奇な様式を取り入れた文学として登場しながら、いつしか定型通りの様式を繰り返す伝統芸になっていたSF小説を根本から変えるべく巻き起こった「新しい波」、SFのSがscienceからspeculativeへと変貌した作品を集めた短編集です。

「リスの檻@TMディッシュ」
存在と思考の意義を問う思弁小説の白眉です。
さすがに「人類皆殺し」を書いたディッシュだけのことはあって、どこまでも徹底された設定は、考えれば考えるほど我々自身の「リスの檻」について考えおよばすにはいられません。

「賛美歌百番@B・オールディス」
意識を持った生物が近づくと、その精神を感知して鳴り響く音楽塔。
それは局部空間に閉じ込められ虚体と化した神殿であり、自らを音楽に変えた生き物の永遠の一部・・・
オールディスの描く極限の終末世界はいつも美しすぎます。
「地球の長い午後」に痺れた方は必読!

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Theme : SF
Genre : 本・雑誌

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