【あなたは死なないわ】1Q84 BOOK2<7月−9月>村上春樹【私が守るもの】

2009-08-29 | 20:23

BOOK1を読み終えたのが7月6日でしたから随分日にちがたっています。
理由は途中、メキシコに行っていたこととBOOK2は妻に先に読ませたことです。
私はキング読み出したらオモシロかったので譲ったのですが、妻はBOOK2には多少の不満が残ったようです。

曰く、謎が投げ出されたままである、だそうですが、私は楽しめました。
私も1巻の読後に、「問いかけられた謎の着地点が楽しみです」と書きましたが、謎は謎として鑑賞に堪えればそれで良しでしょう。
謎の結論を持たないまま問いかけ、それを見せるのはシュルレアリズム絵画の手法ですよね。
数学の問題じゃないんだから、解答のない迷宮だけを愛でるというのもありです。
というか、数学上の難問も解決されるまでが華だからねえ・・・フェルマーなんて見ているとさ。解決されると誰も見向きしなくなる。

そして多重に絡み合った謎はますます美しさを増していると思います。
ちなみにBOOK1との合間にも、小沼丹、百田尚樹、歌野晶午、Sキング、ガルシア=マルケスと読

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Theme : 読書メモ
Genre : 本・雑誌

村のエトランジェ 小沼丹@不思議で特別な清涼感は健在なれど・・・

2009-08-16 | 17:16

たぐい稀なる透明感と清潔な読後感に溢れた「風光る丘」には驚かされました。
発表が昭和43年ですよ。
あの時代の日本なんて今のクールJapanと違って貧乏で野暮な時代だと思っていたからさ。ここまでの洗練と品格があるとは思わなかった。

で、今回は短編集ですが「紅い花」が一番オモシロかったです。
奔放な女性と詩人の恋の行く末・・・特にラストは鮮烈で大きな余韻を残します。

逆に「バルセロナの書盗」はホントウに小沼さん?という感じ?
小説を料理に譬えるなら小沼さんのは極上の薄味を按配した懐石料理って感じなんだけどこれはパエリアかな?
でも短編集なら1品だけにして欲しいのが本音です。
読みたい小沼さんの味わいはこの辺じゃないですから。

「汽船」や「白い機影」は小沼さん独特の感性を閃かせる感覚の小品。
「登仙譚」は笑いました。

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Theme : 最近読んだ本
Genre : 本・雑誌

ボックス! 百田尚樹@卓越したストーリー! 素晴らしい青春小説です

2009-08-14 | 16:06

魅力に溢れた二人の主人公の成長を描いた教養小説(ビルドゥングスロマン)の傑作です。
高校のボクシング部が舞台ですが、ボクシングに興味のない人にも絶対にオススメ出来る傑作でした。
キャラクターの造詣は秀逸であり、ストーリーに織り込まれた巧みな伏線は最後まで読ませます。
百田さんはかなりのボクシングマニアではないでしょうか。
でなければこのディティールは出ないと思います。
書いてあることがイチイチリアリティありすぎです。

脇役陣の充実も半端じゃないです。
特にデブでブスの女の子、丸野さんには泣ける、泣ける。
カンクンのビーチで読んでいたんですが大泣きしていました(笑
守護天使かあ(読めば分かります)・・・今、思い出しても泣けます。
その他、一番のライバルの背景は見事ですし、嫌な野郎の描かれ方も高水準。
なんとも不気味な闇を抱える老人と、結果の出ない練習にめげることのない仲間達などキャラクターの充実ぶりは半端じゃないですね。

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Theme : 本の紹介
Genre : 小説・文学

1Q84 BOOK1 村上春樹 @文学と娯楽の高度な結晶と思う

2009-07-08 | 16:13

どんな趣味であれ長年熱心にやっていると根拠のない自惚れが出て来て、自分はその辺の一見さんとは違う、と思い始める。
本の場合なら、いわゆる「邪悪な読者」になるわけです。
そうなるとまずベストセラーの類は読まない。
読むことが趣味になると、次から次へと読みたい本が出て来て現世とは隔絶しがちなのです。(ベストセラー作品に惹かれることもあまりないしね)
今回も売れているうちは読むまいと思っていたんですけど、スタニスワフ・レムの「虚数」が何となく読み難い代物だったので読むことになりました。

この小説の優れた点は
1)文章が心地良い
読んでいる間、ともかく文章の肌触りが良い。
とてつもなく高級なホテルのベットに敷かれたシーツのような肌触り。
ポエティックな余韻を残す比喩も冴えています。
例えば
「いったん黙り込むと、月の裏側にある岩みたいにいつまでも黙っている」とか

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Theme : 小説
Genre : 小説・文学

悪人 吉田修一 @なんとパワフルな純愛小説か!

2009-05-19 | 23:27

発売と同時にベストセラーとなり、書評子から一般読者にいたるまで大評判となった小説です。一般読者とプロの書評子を同時に喜ばせるのは大変なことです。
私もすぐに購入したんですが、読んでなかったんです。
読み始めてすぐにあんまり暗い雰囲気なんで嫌気がさしたんですね。
吉田さんの描写力があり過ぎて、「餃子の臭い」まで漂ってきそうで、不快でならない。

今回最初から読み直したのですが、感動しました。
なんとも厭らしい女性と男性と気が効かなすぎる一人の悪人の話は後半、サエナイ一人の女性の登場で一変します。

そして始まるとてつもない純愛劇・・・
私は恋愛小説ってあんまり読まないんですね。
恋愛自体、それほど信じてないもので(←このことについては長くなるので略)

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Theme : 読書感想
Genre : 本・雑誌

ストーリーの迷宮 阿刀田高@狂気を外側から描く作家の今回は、

2009-05-18 | 20:21

阿刀田高は冊数から言えば私が最も読んでいる作家だと思います。
文体が都会的で洗練されていて非常にスマートで洒落ています。
そして怖い。
でもその怖さはジム・トンプスンのように読んでいて、コイツ、イッちゃってるだろう、という狂気が内包されているような怖さではなく、冷静な外科医が狂気という術野を切り広げたかのような、明快な光に満ちた怖さ。
この方ほどクールに狂気と恐怖を語る人はなかなかいないと思います。

この本はそんな阿刀田さんが過去に読んだ「夢十夜」、志賀直哉、民話からモーパッサンまでをモティーフに書かれた短編集です。

夢か記憶か現実か、はたまた以前読んだフィクションなのか?という迷宮を彷徨わせるアイデアはヨロシイと思うのですが、肝心のキレはイマイチ。
阿刀田作品ならもっとオススメ沢山あります。

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Theme : 短編小説
Genre : 小説・文学

【毒入り】芥川龍之介全集6【キケン】

2009-04-25 | 20:58

何故か、今どき、この年になって芥川龍之介です。
読んだのは全集の6巻目で、最後の作品集。
遺稿となった「歯車」と「或阿呆の一生」などが中心の作品集です。

全編、大したストーリーもない短編中心に27編。
500p弱ですが、一気に読み通してしまったのは、ひとえに文章の力です。
伊達に後年、最も権威ある賞として「芥川」を名乗ってないのが分ります。

でも不思議・・・三島や川端・・・読んでるだけで華麗にして豊穣。
三島なんて絵でいうと狩野派の金色の輝きだし、川端は怜悧なる墨絵の世界?
漱石は底知れぬ教養・・・
そういう観点からいうと芥川の文章は驚きに乏しい・・・色彩もない・・・大自在の境地って感じでもない。
あるのは、神経症の細かい襞の震えの作る陰鬱な影・・・

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Theme : 本の紹介
Genre : 学問・文化・芸術

涼宮ハルヒの溜息&退屈  谷川流 /シリーズ2番目、3番目!むしろ読んでから観ろ!

2009-04-20 | 20:28

アニメでの「涼宮ハルヒ」シリーズは、予告の順番がメチャクチャで分りにくかったですか?放送が終わった後でPCダウンロードで見たので事情が良く分らないのですが、原作となったこのライト・ノベルシリーズもナンバーがないので順序が分り難いですね。
「溜息」はその2番目で、アニメでは映画の回に辺ります。
「退屈」は3番目で、虫と戦う回と孤島での殺人事件の回になります。

「溜息」の方は、読むとアニメで、?と思った、突然しゃべる猫とか、撮影中に長門がみくるに飛び掛かる理由などが明らかになります。
そしてアニメでは描かれなかった大変な内情も!
このアイデア、よくあるネタだ、と決め付けるのは簡単ですが、ネタが登場人物のキャラクターを良く広げていて生きています。
中々の手際だと思いました。

特にアニメで何気なく使われていたセリフに、大きな意味を持たされたラストはお見事!
これは読まないとアニメの方も分らないでしょう。
確かに文章は簡単でライトノベルそのものですが、売れるだけの仕掛けはしてあると思いました。

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Theme : 涼宮ハルヒss
Genre : 小説・文学

壺坂幻想  水上勉   @美しさと貧しさのレベル

2009-03-18 | 11:52

今どき水上勉の短編集を読む方がどの位いるのか分りませんが、読めば稀有な読書体験が出来ると思うので記事にします。

この短編集は作家、水上勉の私小説なので、生まれ故郷の若狭の農村部が舞台となる作品が多いです。
怜悧な美しさを称えた風景描写は文豪ならではの力であり、黒白単色の味わいは、水墨名画の趣き。
読めば一瞬にして時代を超え、場所を超え、読者はひなびた、小雨のそぼ降る石山寺の山門へと旅立てます。
その寒さ、冷たく濡れそぼる寂寞たる風景は、暗い孤独の暗喩として長く心に残ります。


もう一つ特筆したいのが昭和初期の日本の貧しさです。
「父が旅先から送ってくる給金は知れたものだった。母は小作に出、他人の田から駄賃米をもらい、山から駄賃の薪をもらい、囲炉裏で生木をくべてくらす日常の思い出には、十歳までの記憶の中でさえ、根雪のように解けずにある貧の、凍て雪のような苦しみがある」
・・・快適に室温を保つエアコン、放り込むだけで済ませられる洗濯機もない。

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Theme : 文学・小説
Genre : 小説・文学

秋の牢獄  恒川光太郎 /天才!恒川光太郎

2009-01-21 | 15:38

3つの話からなる中編集ですが、全部が傑作という凄い本です。
以下作品別に感想を書いてみます。
1)秋の牢獄
同じ一日を繰り返し続ける女子大生・・・ありがちな設定ですし、この手の小説の好きな方ならケン・グリムウッドの「リプレイ」を思いだすかもしれませんが、優れた作家というのはありがちな話しを巧みに語るものなのです。

「時間の牢獄」に囚われた主人公は、戸惑いながらも日々をしのぐうちに仲間と出会い、励まされますが、新たな安らぎはすぐに崩壊していきます。
そして訪れる夢のような日々・・・
恒川ワールドに欠かせない「恐ろしくも美しい圧倒的な存在」がもたらすラストは、大きな余韻を残します。

2)神家没落
何気ない散歩の途中で迷い込んだ一軒の家・・・それは出ることの適わぬ結界に阻まれた聖なる家

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Theme : ファンタジー小説
Genre : 小説・文学