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大いなる眠り:村上春樹訳 レイモンド・チャンドラー@「現代の都会」が生み出したヒーロー像。その淵源は1939年

2013-02-05 | 22:56

村上春樹訳のレイモンド・チャンドラー作品も四冊目です。
これはその長編デビュー作ですが、正直、春樹訳チャンドラー作品、最大の読み処となる、文章に宿るリリシズムという点では過去の3作品に劣るモノです。

ただこの作品は、この後、映画や小説、日本のアニメに至るまで、無数のフォロワー生んだ「偉大なるマーロウ@都会のダークサイドを歩く、シニカルで優しい孤高の騎士」誕生を告げるモノであり、ル・モンド、タイムの評価を待つまでもなく、ミステリー小説マニアなら抑えておく作品ですね。

双葉十三郎訳でも読んでいたのですが、今回読んでみて「大いなる眠り(the big sleep)」という題名が凄く、腑に落ちたよ。

あいかわらず素晴らしいのが「あとがき」で、以下フィクションに対する評価基準としてと今後も参考になると思える言葉を(個人的に書き換えて)備忘録
1)なんらかの過剰さを欠いた「名作」がいったいどこにあろうか
2)「すべてはロジカルに解決されているけれど、話としてはそんなに面白くない」小説より「うまく筋の通らない部分も散見されるものの、話としてはやたらと面白い」という小説の方が遥かに魅力的
3)現実離れした物語が「寓話」なら、それは「神話」にまで昇華されている。
「神話」と「寓話」の違いは何か?
寓話は形象の組み替えというレベルで完結しているが、神話は人の心の「元型」に結びついている。

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Theme : 推理小説・ミステリー
Genre : 本・雑誌

ルパン、最後の恋 モーリス・ルブラン@コンプリート癖がないなら他を推奨

2013-01-20 | 15:54

スポーツもダメ、音楽もダメ、勉強だって大したことない私が、人生で初めて抱いた自分でも出来そうな望み。
それが世界のミステリー史を彩った著名作品は全部読む、ということでした。
当然、モーリス・ルブランのルパンシリーズも、全巻読破したのですが、大変オモシロかった。
ルパン物とホームズ物は、有名なだけでなく、ホントに楽しい上質の読み物でした。
そうなると未発表作であるこの最終作は読まない訳にはいかないだろう、ということですが、正直ルブランの息子が発表をさせなかったのが分かる出来です。

最後の解説にあるように、まだまだ文章は完成の中途であり、膨らみがなく、話そのものもルパンが明智小五郎なのか?彼らは少年探偵団なのか、というストーリーで、スリルもサスペンスもトリックも特になくて・・・

私のように著名作品コンプリートにこだわらないなら、もっと楽しい作品沢山ありますね。

ま、批判だけでもなんなので、ルブランに敬意を表するため、印象に残ったルパンのセリフを以下紹介
「一番大事な武器、何よりも勝る武器、それは冷静でいることだ。完璧な鎧で身を固めているように落ち着き払っていれば、敵のほうが慌てだす。攻撃したいのだが、反撃が恐ろしい。攻撃する前から反撃の方が大きいような気がしてしまうのだ。どこから来るのだろう。どんなふうにやるんだろう、とね。
とはいえ正しい方法で精神を鍛え上げるには何十年もかかる。フランスの教育は愚かしい。鋼のように冷徹で、斧のように切れ味のよい強靭な精神の持ち主を造らなければならないのに、感受性ばかりを養っているんだから」

Theme : 海外小説・翻訳本
Genre : 小説・文学

アンダーワールドUSA(下)ジェイムズ・エルロイ@豊穣なる暗黒はより成熟を遂げ華を開く

2012-02-09 | 21:02

オモシロかったです。
齢60歳を超えたエルロイですが、毒に満ちたその作品は衰えるどころか、より成熟し、描かれる暗黒は、色彩をいや増して鮮やかでした。

今回、久々の新作を読んで感じたのは、ともかくこの人の小説はカッコイイんだ、ってことです。
ブツ切りの文章なんですが、ひょいと描かれる街角には詩情がよぎり、悪行をなしながらも苦しみのたうつ人物像にも、ふと神の赦しの兆が訪れる。
それがカッコイイ。
一見、とっつき難い印象だからこそ、その魅力に触れた瞬間、読者は、特権的な世界に入れたような気になれる。
音楽にしろ、映画にしろ、小説にしろ、絵画にしろ、分かりやすくてcoolな作品ってないでしょ。
本当にカッコイイモノって、どっか敷居が高いんだよ。

思い浮かんだ仮説1:エルロイはチャンドラーの後継者ではないのか?
甘いlyricalな文章が売りで、その主人公の行動原理は騎士道的な美意識が元になっているチャンドラーと、歴史の裏側で、血まみれの地獄巡りをするエルロイの登場人物たち。
真反対の印象だし、そもそもエルロイはハードボイルド界のドストエフスキーじゃないの、ということですが、案外coolな読み物としては、通底するものがあるんじゃないかな。
変わったのはチャンドラーの時代のcoolと、現代のcoolだけなんだ、というのが私の結論です。

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Theme : ミステリ
Genre : 小説・文学

アンダーワールドUSA上 ジェイムズ・エルロイ@飛び込めばcoolな1品

2012-01-13 | 21:40

ジェイムズ・エルロイの小説を買う時はいつも少しだけ思い切りがいる。
彼の文体は親しみやすいとは言い難いし、次から次へと新たな登場人物が出てきては、違う話をし始める。
その世界に入るまでが大変な作家なのだ。
もし上下二巻のハードカバーを購入しても、まったく入り込めなかったらモッタイないなあ、という気持ちのハードルがある。
新刊が出ていることは知っていても、ネットでは買えない作家だ。

でも実際に書店で手に取ってみれば、いきなりA・E・ハウスマンの文章から、
「肉は動かずとも、血はさまよう。
息はいつまでも止めておけない。
目覚めよ、若者。旅が終われば、
眠る時間は充分にあるのだから。」
なんてある。もう買うしかない。

実際「THENあのとき」と書かれた小節から始まるストーリーは、軽快に走りだし、引き込まれる。
ただいつものようにデモーニッシュな黒い手ごたえが立ちあがってこない。
これは失敗かなあ、さすがのエルロイもついに老いたか、と思って100p位。
まあ「アメリカ文学界の狂犬」最後の大仕事かもしれないんだから、少しツマラナクても付き合うか、とアキラメかけたあたりから、雰囲気が良くなってエルロイワールド没入。

で、今回、読んでみてエルロイの魅力がついに分かった。

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Theme : ミステリ
Genre : 小説・文学

リトル・シスター レイモンド・チャンドラー/村上春樹訳@青豆は梅安由来ではなかった

2011-02-26 | 21:36

村上春樹によるレイモンド・チャンドラー作品の翻訳3作目です。
ミステリー史上に残る「さよなら、愛しい人」「ロング・グッドバイ」に比べると、この本の知名度、劣りますが、出来もその程度なのが残念です。

導入部は順調で、その後も部分部分、読ませる文章はあるんですが、全体の構成が未整理で、中盤には読むのが辛い部分もあります。
事件の全貌が明らかになっていく終盤は勢いが復活するのですが、村上訳のチャンドラーを手に取るなら他の作品からが良いでしょう。

それを読み終えてなおアメリカ文学への興味が尽きないなら、フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」かカポーティの「ティファニーで朝食を」をおススメしたいですね。
以上の作品を読み終えてなお、というなら良いと思います。

この作品で注目したのは、青豆さんの殺しの技が藤枝梅安由来でなかったことかな(笑
この本の原著を村上春樹さんが読んだのは随分前だと思うのですが、その記憶が熟成されて、後の1Q84のキャラクターに結実した、と思うと胸熱ですね。

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Theme : 本の紹介
Genre : 学問・文化・芸術

ビッグ・ノーウェア(下)ジェイムズ・エルロイ@鼬という暗喩、ダドリー・スミスの大きな影

2011-01-12 | 10:52

集積回路におけるムーアの法則を思わせるのが、フィクションにおける残酷描写の暴走ぶりです。
特に映画はVFXの飛躍的な進歩によって、ショッキングシーンの歯止めが無くなった感があります。
そんなフィクションに親しんでいる我々ですから、今さらいくら暗黒シリーズと言っても、20年以上前の小説に過度の刺激はないだろう、と思ったんですが、なんの。
後半の盛り上がりぶりは、人間性の奈落に向って、読者の襟首掴んで暴力的に覗かせるような迫力です。

巧いなあ、と感じたのが、鼬の使い方で、その凶暴な生態の描写が非常に巧み暗喩となって小説全体の基調低音となっている。

最終章でのアメリカン・ヒーロー物(というかアンチ・ヒーローですが)的な終劇のさせかたは、伝統芸も出来るんだぜ、という芸域の広さを感じさせますね。

ダドリー・スミスの悪魔的な造詣が冴え渡り、このキャラクターは、もっと世に知られても良いのでないか、と感じました。
デカクて強くて凶暴で悪賢く、自らの信念と欲望だけに忠実な悪魔。
アメリカではフォロワーとかあるんでしょうか?
ちょっと知りたいですね。

Theme : 読んだ本。
Genre : 本・雑誌

ビッグ・ノーウェア(上)ジェイムズ・エルロイ@魅力は暗黒だけじゃない

2010-12-28 | 22:56

19紀のロシアから20世紀のアメリカに転生したドストエフスキー。
ジェイムズ・エルロイは、暗黒と狂気を描く独創の天才作家です。

いわゆる「革新性という美点で、不適切という欠点を覆せるのは稀である」という一般論をあざ笑うかの如く、「ホワイト・ジャズ」や「アメリカン・タブロイド」では驚きの文体で小説世界をひっくり返して見せました。

この作品はLA暗黒史と名付けられた4部作シリーズの2作目。
一作目の「ブラック・ダリア」よりはこなれていながら、最終作の「ホワイト・ジャズ」よりはずっと普通の文体という一冊です
映画化もされた「L.A.コンフィデンシャル」の前を描いている作品ですが、原作の魅力はコッチじゃないかな。
キム・ベイシンガーの役処がないから、映画化はされず知名度は劣るけどね。

エルロイ作品、というどこか物々しい評価にめげず、読みだせば冒頭から剣呑がムードの漂う年明けは午前零時の描写で、一気に物語に引き込まれます。

読み進めればストーリーもキャラクターも丁寧に描かれて、意外なほど親切な造り。
翻訳ミステリーにありがちな、この人誰だっけ状態には陥りにくい、と思う。
というか、このシリーズの読者なら、おなじみの登場人物が出てくるんだけどね。彼らがみんな濃いんですよ。

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Theme : ミステリ
Genre : 小説・文学

フレンチ警部と毒蛇の謎 FWクロフツ @倒叙物だけど、ラストは鮮やか

2010-08-26 | 21:47

リアリズムと鉄壁のアリバイ崩しを描き、ミステリー史上に大きな足跡を残したFWクロフツ。
その黄金期を代表する作家の最後の未訳作かつ倒叙物、と言われると、かつて白熱するような思いで「クロイドン発12時30分」を読んだ身としては手に取らないわけには行きません。

読めば確かに現代の作品と比べるとスピード感に劣り、犯人が善人過ぎる、と感じられるかもしれませんが、普通の男性が少しづつ道を踏み外し、犯罪に手を染めて行く過程は極めてスリリングであり、犯行後に悩み苦しむさまは、サイコがデフォルトになった今だと逆に新鮮なくらいです。

全編を通じてクロフツ流儀の描写は落ち着いて楽しめ、その古き良き英国流儀の香りは、クラシック・ミステリに親しんできたファンには、独特の心地良さがあるのではないでしょうか。
さらにラスト1p、倒叙物にも関わらず、非常に鮮やかな幕切れが待っています。
単なるトリックを超えて、人間への視点が逆転する深みのあるサプライズ・エンディングだったと思います。

それでもこの作品、少し地味な印象は確かなので、今回は個人的に強い思い入れのあるコッチをオススメ

とてつもない大傑作。
中学時代に読んで、あまりのオモシロさに気が狂いそうになった逸品です。

Theme : ミステリ
Genre : 小説・文学

バッド・モンキーズ マット・ラフ@私にとってのミステリーの衰退

2009-12-24 | 21:18

海外編で「このミス4位」、「文春10位」を獲得した作品です。

内容は殺人の罪で逮捕された女性の語る話。
彼女が言うには自分は「バッド・モンキーズ」という組織の一員で、世界にはびこる悪を殲滅するのが仕事と言う・・・果たしてそれは狂気の中での妄想なのか、驚くべき真相があるのか、という処が読み所になるわけです。

小説にも地道にリアリティを追求した物から、夢物語まで色々あるわけですが、これはいわゆる大風呂敷小説です。
とんでもない設定、展開を繰り出して読者を煙に巻き、話を飛躍させて楽しませるのですが、肝心なのは最後の着地。
無茶な話をどうまとめるか?が知恵の出しどころで、その結果如何によって評価が定まります。
巧くやられたと爽快感があれば著者の勝ちですし、なんだこりゃ、になれば負け。

著者のマット・ラフはアメリカでは有名なカルト作家だそうで、期待を大いに膨らませて手に取りましたがダメでした。

冒頭から序盤に掛けては現実にはあり得ない設定が次々に繰り出され、その場面場面に笑い何処あり、驚きありで、これはオモシロイと思ったのですが、途中から失速。
失速の理由は、マンネリズムです。
話自体は進むのですが、設定の同じようなモノが続きすぎる。
もう分かったから、と飽きてしまいました。
それでもラストはスゴイのかとなんとか最後まで読んだのですが・・・

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Theme : ミステリ
Genre : 小説・文学

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