チャンピオン ジョー・ルイスの生涯   クリス・ミード

2008-07-06 | 00:26

ボクシング史上、最強の選手は誰か?
という質問には必ず名前の上がるジョー・ルイスの伝記です。

時代は大恐慌のさなか。
公然たる黒人差別のあるアメリカで、一人の少年がプロボクサーになるべく訓練を受け始めますが、リングの上ではまったく冴えず、コーチの評判は散々。
なんと後に今だ破られぬ防衛25回の大記録を作る選手の前途は悲観的なものでした。

さらに選手として実力を身に付けたとしても、当時の社会情勢では、黒人がヘビー級のタイトルマッチなどとんでもない、という時代。
その原因はジャック・ジョンソンという極めてアナーキーな選手に由来するのですが、そもそもたかが数十年前のアメリカでの黒人差別は酷かった。
黒人男性は、白人女に色目を使ったと言われてはリンチに会い、木につるされて「奇妙な果実」となり、黒人女性は待ち伏せされて輪姦される。
そんな激烈な試練の時代を、ジョー・ルイスはあくまで控えめに、慎重に、かつ努力を惜しまず切り開きます。
こう書くとなんだか品格の高いアスリートの話のようですが、ボクシングには真面目だったものの、異常な浪費癖で莫大な収入でも納税は滞納。極端な女癖の悪さで結婚生活も破綻と散々です。

やがて第二次大戦が始まると、時代はジョーを巻き込みながら意外な展開を見せ始めます。

脅威となりつつあるドイツの誇るトップ・ボクサー、シュメリングとの対戦から、いつしかジョーは、黒人というよりアメリカの威信をかけた代表となり、黒人蔑視の風潮を改善しつつ、やがてはナチスを含む人種差別の矛盾への問いかけとなり、根強かった黒人差別撤廃への道を開いていきます。

そんなジョーへの黒人の熱狂、期待は凄まじく、
この本にも使われている有名な言葉を引用しましょう。
場面は苦戦するジョーに、ラジオを聴きながら思う南部の黒人の言葉です。
「わたしの人種がうめき苦しんでいる。わたしたちと同じ人間が倒されようとしている。またリンチだ。女は犯され、少年は不具にされる。男が逃げる沼地を猟犬が追う。
この世の終わりにちがいない。もしジョーが敗れたら、わたしたち黒人は奴隷時代に舞い戻り、救いようがなくなってしまう。わたしたちが下等な人間であるという言いがかりがすべて真実になってしまう」


晩年、ラスベガスのカジノで奇妙な「セールスマン」となるジョー・ルイス。
ずっと読んできたキャラクターからすると、私にはとても幸せな幕切れだったように思えます。
悲惨もあった人生でしたが、神は最後に微笑んだ、と思いましたね。

名作といわれる作品だけに、読んでいても当時の社会背景への造詣の深さ、新聞記事の引用などは非常に巧みなのですが、ファイト・シーンになると描写の質がガクっと落ちる。
どうやらスポーツライターではないな、と思ったら、本職は歴史学者でした。
それにしても引用される新聞の記事のレベルの低さには驚きます。
いつの時代もマスコミは、冷静で奥深い場所にある真実より、安易なセンセーショナリズムと売る商売なんだな、と思います。


ps
アリ「あんたを倒した夢をみたぜ」
ルイス「夢でも無理だ」
そう言い返したルイスですが、確かに今見てもパンチは非常に速く強力に見えます。
それでも果たしてアリとルイスがもし戦わば、どちらに凱歌が上がるのか?
非常に興味が沸きますね。
タイソンならどうか?
私は個人的に全盛期のタイソン最強説主義者なんですけど、みなさんはどうでしょう?
今、DVDボックスでピンクロン・トーマス戦見てんだけど、やっぱりそう思うんだよ。


Theme : ボクシング
Genre : スポーツ

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  • 2008-07-06 | 03:01 |
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