善き人のためのソナタ

2008-10-18 | 21:43

 この映画、最近では得がたい素晴らしい題名に惹かれる方は多いと思いますが、内容もその題名に劣らぬ出来です。

舞台はまだベルリンに壁があった頃の東ドイツ、時代は社会主義独裁の暗黒時代です。
その国家保安部、秘密警察のヴィスラー大尉が主人公となります。
主演のウルリッヒ・ミューエは、階段の登り降りのときでさえ、異様なほど背筋を伸ばし、その徹底した几帳面さを表現します。
こんな万事に遺漏のないような男に盗聴され見張られたら、まず何も出来ないな、もう生活しながら監獄にいるとのと同じだ、と思わせるのに充分な迫力です。
黙って監視しているときも、その異常を思わせる集中力が怖いのですが、「腑に落ちないな」なんて静かなセリフで、いつの間にか眼の色が深くなっている。
国家ごと牢獄となった社会で、その非情なる警吏たる男の内面の殺伐たる光景に、観客は慄然とするでしょう。
党幹部が平然と女性を陵辱するシーンや、ホーネッカーへのギャグで凍りつく場面など、あったんだろうなあ、というエピソードも印象的です。

そんななかブレヒトの詩や、ピアノソナタを聴いて、ヴィスラーの内面が変わっていく。
芸術は人を変えられるのでしょうか?
変えられるとしたら、どこまで、どのくらいの人を変えられるのだろう?
どうか芸術の力が偉大であり、明日の世界でより多くの善き人が生まれるように、と祈る気持ちにもなります。

ラストシーンは、深く長く観客の記憶に残るでしょう。
彼は絶望的なほどに強力だった「悪しき物」に勝ったわけです。
映画史上においても特筆される名シーンだと思います。

ps、この映画からのトリビア
1)悪魔というのはギリシャ語の知識が語源である。

2)長時間尋問すると、真実を語る人は、同じことを言い方を変えて何度も言い、嘘を言っている人間は、同じことを言う。
また無実の人は怒り出し、有罪の人は泣き出す。

なるほどね。

Theme : 心に残る映画
Genre : 映画

Comment

そうでしたよね。

>やられた! って感じのラストでしたね。(^ァ^)
トラックの前に飛び出す女優さんのシーンから、ラストまで、白眉とも言うべき作品でしたね。

特に最後は良かったです。

  • 2008-10-19 | 13:43 |
  • 晴薫 URL :
  • edit
これは見ました

やられた! って感じのラストでしたね。(^ァ^)
当時の東独はかくやと想わせる、寒々としたトーンが印象的な作品でした。
いつか、もう一度ゆっくりと見てみたい映画の一つです。

Post a comment

Secret