マイクロバス     小野正嗣@目指す高みへの道は険しい・・・?

2008-12-26 | 21:37

芥川賞の候補にもなっていらっしゃる小野正嗣さんの最新作です。
期待の新進作家はどんなモノか、と読んでみたのですが、読後は複雑な感慨です。

2編の中編からなる1冊なのですが、物語はいきなり介護士の会話から始まります。
老人介護・・・リアルである分、フィクションの世界ではあまり接したくない分野ですが、小説は「人魚の唄」という題名通り思いもかけぬファンタジックな世界が始まるか・・・と思わせといて始まりません・・・美しい比喩と描写で深海から空を見上げる時のような光の煌きを書いておいて、排泄物と醜悪な咀嚼の音が描きだされます・・・

小野正嗣は安易な(小野正嗣にとっては安易ということ)綺麗事を徹底して排することが、一つの目指すべき境地のようです・・・

確かに「ただ綺麗なモノ」を「ただ綺麗に書く」という表現は底の浅いものだ、と思いますが、カミュからカポーティ、オルハン・パムクに至るまで、美しい物の持つ神秘性や深淵を描いてその本質に迫ることこそが優れた作家の特質だと思っているので、この姿勢にはちょっと戸惑いますね。
醜悪なモノを神聖の境地に運ぶ技はエルロイからトンプスンに至るまで存在するわけですが、彼らの描く醜悪さは、あくまで人間が根源的に抱える醜悪さであり、生理的なものではないからね・・・生理的な悪趣味ならバタイユか・・・でもバタイユは遠いぞお・・・
それに「マイクロバス」で縫い合わせようとする世界観は、弱者への視線が強く、バタイユほど倒錯した価値観でもないんだよな・・・

結局私にはこの作家が目指すべき場所が分かりませんでした。

Theme : 文学・小説
Genre : 小説・文学

Comment

Post a comment

Secret