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地球のはぐれ方 村上春樹   @ホラー作家志望者は必読

2009-02-14 | 00:10

村上春樹さんとそのお友達2人が、名古屋やら熱海やらハワイやらをゆるゆる旅するエッセイ集ですが、その中の「カフカエスクな妄執の迷宮」という一編は、極めて優れたホラー短編の要素がすべて詰まっているので記事にします。

まずホラー小説を書く時の目的は何か?
読者を震え上がらせたいってことですね。
ホラー小説を読む時に読者が望むことは何か?
思い切り怖がりたいってことです。

では色々な要素のある中で、最も怖い要素は何か、といえば、読後もう後には引けない文章を読んでしまった、と思うことです。

フィクションがフィクションのまま完結してしまっては怖くない。
吸血鬼? サイコ殺人鬼? そう怖かったね、で終わってはイマイチです。
フィクションが現実との境界を侵食する。
あるいはしたのかもしれない、と思える時、おそらく読者は心底震え上がる。

ならばそう持っていくにはどのような導入をするべきかといえば、手の内を見せない、というとこでしょう。
ということは巷間出回っている「ホラー小説」はそれだけでハンデということです。
私がこの1編を紹介してしまうこともまたホラーのレッテルを貼ってしまうことですから、本当はしたくなかったのですが、まさかこんなゆるゆる旅エッセイの中にこんな異品が隠れているとは思いもしないと思われるので、紹介する訳です。
今回、肝心なのは、手管、技量を学ぶことなので、良しとしてください。

この1編も他のエッセイと一緒で、某所へ行ったという話なんですが、導入部はまったくの「日常」にあるわけです。
それから徐々にその場所の異様さが明かされる・・・ただここまでは例によっての村上春樹節の描写で、楽しいけれどなんとことない。

ホラー小説を書きたいと思っている方に参考にして頂きたいのは、村上春樹がほとんどその場所の観覧を終えようとした処からです。

村上春樹は読者の乗った梯子を不意に揺さぶる・・・このタイミングが絶妙です。
あまりの異様さに、ボンヤリとした不安に陥った読者は、その揺れに脅かされる。

そして村上春樹はその場所を出て、「現実に帰る」のですが、すでにその「現実」は歪んでいるのを発見します。
そして止めとなるのが最後の1行。

この1行で、村上春樹と一緒にその場所を探詣したあなたの一部はすでに「妄執の迷宮」に囚われ、鉄格子を握り締めて声なき叫びを上げ続ける自分を見つけるのです。

残酷描写もグロテスクな描写もまったくない。
血の一滴も流れない。
でも読み終えた後に残る「妄執の刻印」はしっかりと記憶に刻まれています。

こういうスマートなホラー短編を、個人的には読みたいものです。
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Theme : ホラー
Genre : 本・雑誌

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