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1Q84 BOOK1 村上春樹 @文学と娯楽の高度な結晶と思う

2009-07-08 | 16:13

どんな趣味であれ長年熱心にやっていると根拠のない自惚れが出て来て、自分はその辺の一見さんとは違う、と思い始める。
本の場合なら、いわゆる「邪悪な読者」になるわけです。
そうなるとまずベストセラーの類は読まない。
読むことが趣味になると、次から次へと読みたい本が出て来て現世とは隔絶しがちなのです。(ベストセラー作品に惹かれることもあまりないしね)
今回も売れているうちは読むまいと思っていたんですけど、スタニスワフ・レムの「虚数」が何となく読み難い代物だったので読むことになりました。

この小説の優れた点は
1)文章が心地良い
読んでいる間、ともかく文章の肌触りが良い。
とてつもなく高級なホテルのベットに敷かれたシーツのような肌触り。
ポエティックな余韻を残す比喩も冴えています。
例えば
「いったん黙り込むと、月の裏側にある岩みたいにいつまでも黙っている」とか
「不吉な予言を準備しながらほくそ笑んでいる、年期を経た魔法使いとしか見えない」など。
読んだ瞬間に月の裏側にある岩や、年古た魔法使いのイメージが鮮やかに浮かび魅了されます。
「月は黙して語らない。あくまで冷ややかに、的確に、重い過去を抱え込んでいるだけだ。そこには空気もなく、風もない。真空は記憶を無傷で保存するのに適している。誰にもそんな月の心をほぐすことはできない」
・・・中々の詩情と思うのですがどうでしょう?

2)出てくるキャラクターが魅力的
女性の主人公と男性の主人公が共に魅力がある。
ナイーブな心情とリスクを負って戦う覚悟をもった潔さがあり私の好みです。
脇役も光っている。
ハードボイルドなボディガードに富豪の御婆さん。コンビになる女性もイイし、ファナティックな編集者も良い。美少女のキャラクターも魅力的(綾波レイというより長門有希に似ている)

3)魅惑的な謎と驚きに満ちたストーリー
仄めかされた謎の見せ方が非常に巧みだと思いました。
月の描写、リトル・ピープルなどあんな姿で登場するとは思いませんでした。
優れたフィクションの要件の一つは常に鑑賞者の思惑の上を行く、ということだと思いますが、この小説は実現しています。
犬の最後も驚かされました。

ストーリーの作り方も、リアルからファンタジックな場面へのジャンプが不意に思わぬ処で来るので、読者は何度も陥穽に落とされる快感がありますね。


私にとっての村上春樹は長編作家としてより翻訳者、エッセイストとしてお気に入りだったのですが、今回の作品はその評価を変えるものとなりました。
なんだか今まで言いたかったことがすごく巧く書けている作品に思います。
次刊移行、ちりばめられた謎の着地点が楽しみです。
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Theme : 小説
Genre : 小説・文学

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