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シドニー!①コアラ純情篇 村上春樹@スポーツへの深い考察と趣味の良いユーモア

2010-10-13 | 23:43

シドニー五輪期間中、23日間滞在し、取材した村上春樹のエッセイ上巻です。
そもそも7年前の文庫ですが、トイレ用として二度目の読了。
文章に品の良いユーモアがあり、スポーツへの洞察が深く、二度目の読書も楽しめました。

まずユーモア篇では、開催前に動物園によって得意の擬人化で笑わせます。
競技では砲丸投げ選手をZZトップのファンクラブ?森の中で近所の熊を脅しながら木を切っていたような激しい「臨場感」がある、なんて書く(笑

日本とサッカーで対戦したブラジル国家をロッシーニのアリア、なんて例えも巧いこと言うよねーー
さらに1000キロドライブをして、その体験もユーモラスに書くのですが、その中では、ふっと紛れ込まされた警官の描写が怖いです。
警官自体は全然怖くないんですよ。
それでもふいに覗いた相手の深遠をイメージさせる1行に満たない文章は見事!

そして自らも長距離ランナーなので、トライアスロンとマラソンランナーの内面の描写は白眉です。
以下はこの本の冒頭、1966年7月28日 アトランタ、から抜書き(ブログ掲載上、略してます)
「私は苦痛を恐れない。そんなものを恐れるわかにはいかない。自分を褒められることがあるとしたら、それは何かを恐れないことだった。正確に言えばこうだ。私は最後には何も恐れなかった。それに目を閉じることなく立ち
向かい、勝ち、そして同時に敗れた。輝かしい夢を見て、同時にそこから覚めた。手強い敵たちと死力を尽くして闘い、同時に彼女たちを愛した。路上で静かに死に、同時にその死を隅々まで生きた。」
2000年6月18日 広島
「揺ぎのないイメージ、そのイメージを支える強い自負心、納得のいくまで自らを絞り込んでいく集中力、筋金入りの自立心、長い夢を見続けることのできる力。長く深い夢の核心にまでたどり着けるのだろうか?結果は問題ではない。それは人の手を離れてしまう問題だからだ。でも同時に、結果はひとく問題なのだ。それはかたちとなって永遠に残り、それからの歳月を大きく左右してしまうことになる」
オリンピックでマラソンを闘うとは如何なる事か、トレーニングを続けるということがどういう事なのか、少し見えるような気にさせてくれる文章です。

百メートル走の文章も、選手が走った後、を書くんですね。
そこに深い納得があるんです。
そのアプローチの仕方、視点の置き方が並じゃない。
時に常人とはまったく違った角度からしか見えないモノを見る力。
それがあると感じました。
スポーツが根源に持つ宗教性、ある種の啓示の力、それを語らせたら村上春樹は随一なんじゃないでしょうか。

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Theme : ジョギング・ランニング
Genre : スポーツ

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