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苦役列車 西村賢太@相当オモシロイ芥川賞受賞作!

2011-02-06 | 14:36

何冊もの本を同時に、始終読みふけっている邪悪な読者にとっては、芥川賞、直木賞に騒ぐのは素人、と感じてしまう。
自分が偉いわけでもないのに、ちょいとその道に長く、詳しいつもりなると陥りがちな傲慢です。

ただ今回は、たまたま受賞者が紹介されるTV中継を見て、えらく綺麗な女性の脇で、小太りの男がウロウロしてるのが、妙に印象に残った。
受賞作は、友なく、女なく、酒だけが慰めの港湾労働者の話、らしい。
でも設定が19歳でしょ。
19歳なら、未来があるじゃん。
どんなに大金持ちでも、年取ったらない未来があるんだよ、実際、貴方は芥川賞獲ったでしょ、なんて皮肉も感じていました。
それでも何かが心に引っかかり続けたので、書店に寄った折、立ち読みしてみたら、読み出した最初の方は、感心するほどのものでもなかったです。

前日、太宰治の短編を一つ読んでいたので、自虐、陰鬱、ダメ男の描写など、フェラーリと安手の改造車位の差はあるかな、と感じたのです。

さりげなく、大仰な言葉も使わずに、スラスラと読者を引っ張りこむ太宰の技量は、サッカーに例えるならイニエスタみたいだ。
川端や三島のように、怜悧で華麗、豊穣なる文章と違い、どこがどう巧いのか分からないけど、巧い、という境地。
なんか本物の天才だけがいける場所にいるのが太宰治。
それに比べれば、この方は出版社の営業乙、という気もしないでもなかった。

それでも購入したのは、やはり何かを感じたからだろう。

そして自宅で腰を落ち着け読み出したら、一瀉千里だった。
書店で同時に購入した6冊の中で一番目の読了本とあいなった。

苦役列車の描写は、実体験ならではのリアリティが心底こちらに伝わってくる。
もてあますやり場のない性欲。
強烈な食欲。
姑息な計算と嫉妬心とこすっからさと度し難いほどの怠惰。
みんな私の中にあるもので、それをこの作品は、鍼灸の名人がするように刺激してくる。
圧し掛かる現実の重みの感触は、ねばりつくようで、その質感は圧倒的だ。

やっと出来た友人が、恵まれた男でありGFもいる、となったあたりを山場にもってくる構成も効果的で、ラストのまとめ方など未来への絶望に一縷の希望がないまぜになるあたり、相当の手練とお見受けしました。


同時収録されている「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」の出来も良かったです。
短いので、なんとなくオマケ扱いの1品と感じていたら、後半の葛藤とあげくにたどり着く真情吐露の場面は身に詰まされる。
とうか、この思い、文学などという特殊な道に進まずとも、いつかはみんな感じるものなのでは、と思いました。
まあそういう普遍性があるから、「文学」になるんだろうけどね。
読んで損のない短編です。

芥川賞、なんて聞くとかえってバカにしがちな「邪悪な読者」のみなさん。
この本を購読しようかどうか迷っているなら、間違いなく買いです。
今、同時進行、中断中の本だけで20冊近くあるので、少し整理が出来たら他も読みたいと思っています。
次は「トリエステの坂道」で少し口直しです。
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Theme : 本の紹介
Genre : 学問・文化・芸術

Comment

Re: No title

> 私もテレビでみて興味を持っていました。
ビジュアルから印象的な方ですよね(笑

> 思えば最近本を読んでないなぁ~と思いました。
まあ、そういう時期もあるでしょう。

>いったい何やっていたんだろう。しばらく読書や映画鑑賞に精を出してみようかなと思います。
お仕事で悩まれているようですね。
私も色々重苦しいこと、多々ありです。
それが昨日、一つ解決しました。
これは嬉しかったです。

後はともかく毎日疲れてなんか、限界ですよ。
今週の土日もやることがギッシリで、ともかく休みがない状況ですねえ。

  • 2011-02-19 | 07:49 |
  • 晴薫(はるく) URL :
  • edit
No title

私もテレビでみて興味を持っていました。
晴薫さんが買いというので買ってみました。

思えば最近本を読んでないなぁ~と思いました。いったい何やっていたんだろう。しばらく読書や映画鑑賞に精を出してみようかなと思います。

  • 2011-02-18 | 22:31 |
  • スマ URL :
  • edit

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