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肉への慈悲 ディビッド・シルベスター@血の匂いが私に微笑かける

2013-07-14 | 23:35

モダン・アーティストの中で、市場で最も評価が高いフランシス・ベーコンに、友人であり美術評論家のディビッド・シルベスターがインタビューした1冊です。
美術史上最も重要な1冊、というふれ込みでしたが、読了後感じたことは、まあそれほどの本でもないような(笑
インタビュー本としては、アルシャンボーの本の方が興味深かったような・・・

ただ昨今の日本の世情をかんがみると、良識が芸術(先端的な文化)に対して健全性という錦の御旗で浸食を計っているのは、見過ごすことは出来ない。
この本の中で語られる本物の芸術家の価値感が、いかに異常か、という事位は、教養として知って欲しいということですね。
異常人なら芸術を創造出来る、ということはありませんが、長く命脈を保つ芸術、文学は、何かしらの異常性を含んでいるモノなのです。
それを健全性の御旗の元に、根こそぎにしてしまうと、暗黒が現実の社会を蝕み始めるだろう、ということは、過去の歴史が教える処です。

例えばフランシス・ベーコンは、こんなことを言っています。
「私は人間が安寧に暮らすべきだとはまったく思いませんし、安寧な生活など絶対に望みません。創造性が萎えてしまいます。不公正は人生の本質だと思います。偉大な芸術を生み出すのは苦痛や個人差であって、平等主義でない。社会的公正というのは無意味に自然にさからうものだという気がします」

「幸福な社会など、誰が気に掛け記憶にとどめるでしょう。何百年後の人々が考えるのは、その社会がどんな遺産を残したか、だけです。歴史に偉大な創造をした社会こそが人々の記憶に残ってきたのです。」

まあ、政治家や役人が言ったら大変な発言ですし、私も同意する者ではありませんが、この位の人間でないと、人
の深い場所を暴くような絵は描けない。
人間がまだ誰も行っていない荒野を切り開くには、自らがナイフの切先になるしかないんです。

「本当の現実を描こうとすると苦しみを写したようになる。それは現実が残酷であるからだ」
「見物人ほど、悲惨な恋愛沙汰や病気を好む者はいません。」
凄い皮肉ですよね。
バラエティ番組に出ては、健全、健全とまくしたてる良識人ほど、週刊誌レベルのゴシップネタがお好みですよね。
誰それがこんな悪いことをした。
誰それが不倫をした(笑
そんな話に目の色を変えている自分が、いかに醜悪な存在かを忘れている。
彼らは絶対に(見ましたというアリバイ以外では)、展覧会なんて行かないし、
川端康成や谷崎潤一郎の美意識など、頭の隅にもない。
あったら言えません。
過去の偉大な画家たち、偉大な文学者たちで、変態でなかった人間って誰がいますか?
カフカ、カミュ、ドストエフスキー、ポー、三島由紀夫、芥川、漱石、太宰、
今でこそ品位と芸術の象徴みたいなレオナルド・ダ・ヴィンチは、墓を暴き、解剖に執着し、胎児を宿した子宮を切り開いた。
そういう人間だからこそモナ・リザを残せたんです。

「ありふれた現実は常に神秘を孕んでいて、その神秘を再現するために絵を用いた@ルネ・マグリット」
「芸術家の仕事は霊媒のようなもので、時空を超越した迷宮の中のものを明るみへと連れ出す@デュシャン」
「抽象画には伝えるものがなく、あるのは美意識と感性だけだ。ひどく水に薄めた感情を抒情的に伝えることは出来ても、インパクトが弱い。ただ見る側は絵と格闘しないですむのですんなり受け入れられやすい@F・B」

結論は、
「絵画にはもう自然主義的なリアリズムなどありえないのだから、新たな神経組織に直接伝わるリアリズムを創造するべきなのです」

こういう本も絶対に読まないのが、成績優秀な官僚たちと、無教養の政治家たち。そして悪を糾弾するしたり顔のコメンテーターたちです。
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Theme : 本の紹介
Genre : 学問・文化・芸術

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