スポンサーサイト

-------- | --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

赤いヤッケの男 安曇潤平@清潔な文体が生かす山という異界の恐怖

2013-07-27 | 22:37

この本の唯一の欠点は、なんとも訴求力に掛ける題名ですね。
個人的には、この題名では読む気にならない。
でもそれは間違った直感で、実際は素晴らしい出来栄えの怪談実話集です。

私はホラーという分野、映画にしろ小説にしろ大好きなんですが、いわゆる実録物は好みではない。
おおむね短いので読みやすいのは確かなんですが、正直、物足りない。
読後、期待外れのことが多く、ホラーでも実録物は範疇外なんです。
ではなんでこの本がオモシロかったかというと、まず作者の安曇潤平さんの文章が良いんですね。
清潔感があり、読んでいて実に爽やかです。
そして気づいたのですが、なるほど、山とは最も身近な異郷だったのです。
今の時代、山とは無縁の場所に住んでいると、すっかり忘れてしまっているんですが、古来から山は神や悪霊、物の怪などの住まう場所であり、畏怖の対象だった。
そしてそんな恐怖は、表面上すっかり忘れ去られても、連綿と血の中に残っているんですね。
だから読んでいてなんとも怖い。
さらに作者の描写が巧みなので、不思議な清涼感もある。

この手の作品集は、だいたい最初の方ほど力のあるモノが多いのですが、この本に限っては読み進めるにつれレベルが上がる印象でした。
一番怖かったのは「ゾンデ」で、ホラー掌編として傑作の域にあります。
喚起される生理的な恐怖と、威力のあるオチ、全体に漂う得たいの知れない雰囲気は素晴らしい。
この作品、どこかのアンソロジーに収録されているはずで、前に一度読んだことがあるんですが、その時も「これは怖い」と思ったのを思いだしました。

「猿ぼぼ」は不思議なぬくもりが印象的な作品。
「牧美温泉」は、描写される心情、姿、自然などすべてが美しく、怪奇モノという範疇を超えて短編の佳品でしょう。

この本を読んで、私らしくもなく山歩きをしたくなってしまいました。
それにはまずは歩くことからで、以前、行った白馬での体験が悲惨だったから、よほど準備しないとね。

スポンサーサイト

Theme : ホラー小説
Genre : 本・雑誌

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。